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ハルノ宵子『それでも猫は出かけていく』 [本]


それでも猫は出かけていく

それでも猫は出かけていく

  • 作者: ハルノ 宵子
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2014/05/09
  • メディア: 単行本


たまたま図書館でこの本を見て、表紙のイラストに魅かれました。
猫を2匹以上飼った人なら、こういうシーンは必ず見たことありますよね!
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裏表紙
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ハイ、我が家も暮れに連れてきた猫と先住猫タビが毎日こんなカンジです。
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手に取って、パラパラっとめくると、
猫が正確に、しかも優美に描かれていて、
へー、猫のイラスト(マンガ)上手いなーと、見て行くと、

最後の著者の紹介で、
1957年、東京生まれ。‥‥あ、私と同じ年!
父は思想家・詩人の吉本隆明。‥‥え?!ってことは? はい、
妹は作家のよしもとばなな。‥‥!!!

ってくらいの著者についての知識しかありませんでした。

この本は、(以下、「はじめに」より)
 真っ白な月が中天に輝く8年前の夏の深夜、隣の墓地で真っ白な子猫を拾いました。 それがすべての始まりでした。
 子猫は「馬尾神経症候群」という障害を持っていました。‥(中略)‥ちょこまか動き回るのに、 おしっこ・ウンコタレ流し!
(中略)
 子猫は「シロミ」と名付けられました。この時から艱難辛苦・試行錯誤の日々が始まりました。 ちょうどその頃、父に取材にいらした『猫びより』の編集者(当時)の稲田さんから、 「次号、シロミについて書きませんか?」という依頼を受けました。‥(中略)‥ 「1回ではムリです。連載ならできます」‥(中略)‥こうして『猫びより』での、8年にも及ぶ連載が始まったのです。
 まさに“激動”の8年間でした。シロミばかりか両親の介護、自身の病気。また“都市猫”という特異な野生たちとも、深く関わるようになりました。
(中略)
 この本は、吉本家最後の8年間の記録でもあるのです。

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『猫びより』は隔月刊のようですね。この本には、その連載一回分の
イラストと文章が4ページ分ずつにまとめられ、50回分が収録されています。

『猫びより』2005年9月号から、2013年11月号まで!!
なんと8年以上!! 

その間、著者は、両親の介護と本格的に向き合い、二人とも見送り、
自身はガンの手術で片乳を失っておられます。

拾ったおしっこ・ウンコタレ流しのシロミの介護のこと
(一応この連載のタイトルは「ハルノ宵子のシロミ介護日誌」だそう)
最初はケージ飼いができないかとか、一部屋に閉じ込めておけないかとか、
いろんなオムツを試したり‥‥で、結局どれも諦めて、
ベッドに人間用モレ防止シーツを敷いて、暑さと寝苦しさに悩まされたり、
ペット用シーツを敷き詰めたり‥‥とガードを試みるも、

「せっかく気持ちのいい寝場所を見つけたのに、どうしてすぐに汚れて寝られなくなっちゃうんだろう‥‥」と、 シロミは本当に悲観した顔をすることがあります。その顔があまりにも哀れで‥‥。
(自分は所構わずモラすのに、清潔好きでちょっとのモレも許してくれないお嬢様キャラ!)
の結果、羽布団のクリーニング代にビビったり(申し訳ないけど、マンガが上手いので笑ってしまった)

父の原稿にモラされて、原稿が読めなくなった(父って!!)なんて“惨事”も!

細菌感染で膀胱内に炎症を起こし、一日おきに膀胱洗浄に通ったり、
フンづまりで動物病院でウンコ掘りしてもらったり、
部屋中にシロミの排泄物がベットリと付いているという大惨事も、
ナゾの物体‥‥シロミのおしりから出てきたからには、ウンコと言わざるをえません。」と、
なんともユーモラスな出来事のようになるのは(ほとんど無臭だったそうだけど)
著者の筆力なのか、性格のせいなのか、猫への愛情のせいなのか。

そして、「父の愛人・フランシス子」や他の吉本家の猫のこと、

外猫たちとの付き合い。著者の猫への愛情がすごいなぁと思うのは、

近所の猫たちにエサをやって回り、雌猫の避妊をしていること。

猫にエサをやることで、ご近所に苦情を言われたり、
猫クレーマー・ストーカーに付きまとわれたりすることもあるのですが、
著者は、

エサをやっていたら限りなく増えちゃうんじゃないか――いくら雌を避妊しても 1匹でも残れば子供を産んで、その中の雌が半年くらいでまた産んで、ネズミ算式に 増えていくから徒労じゃないか――という考えは間違いです。ノラの生存率は恐ろしいほど 低いのです。エサをやった位では限りなく増えません。私が完全避妊作戦に踏み切った理由も、 増えていく恐怖からではなく、逆に、春に生まれてコロコロとたわむれる仔猫たちがどんなに ケアしても秋冬になると一年草のように消えていくその繰り返しを見ているのに耐えられなくなったからなのです。

と、コツコツと猫の避妊を続けているのがすごい。

ノラ猫の命が短いのは私もよくわかっています。
実家の物置きに、エサだけはもらう半ノラ猫たちのことはこのブログでも書きましたが、
たくさん子猫が生まれても、母猫のおっぱいで育つ間はまだいいのですが、
離乳期に多くの子猫が育たずに死んでしまうのを見るのがツラかったです。
成猫になっても、オスたちのケンカが始まったりして、10匹以上にはならなかったですね。
朝晩エサがもらえる状態でそんな程度なんですよね。
避妊してやれるといいんだけど、なんせ先立つものが‥‥

まぁ、著者も、

正直きびしい」とも。
避妊手術済みの猫が、月日を経ずして死んだ時、水の泡と消えるのは労力のみならず、お金もです。

何のために苦労して捕まえて、短い一生なのに怖い思いや痛い思いをさせたのか‥‥

でも、
悲しいかな、ノラの寿命が短いからこそ、避妊には効果があるのです。徒労なんぞと言ってるヒマがあったら、 コツコツと続けていくのみです。
うー、頭が下がります。

著者は妹から「猫界のマザー・テレサ」と呼ばれているそう。
で、父からは「猫界の光源氏」だと称されたと。
どんな猫にも分け隔てなく愛嬌をふりまくからだと。

生きているすべてのモノは、食う権利があるのです。生きている限りは手厚く、そして避妊は非情に――が、私の方針です。

ご近所の冷たい視線には、
「お宅がエサやってるんだから、ウンコ片付けてよ!」「はいはい、今やりますよ」だっていいんです。 しかし現代社会は、衝突よりは排除、あるいは“社会正義”と銘打って行政に丸投げ、という方向に向いているようです。

うんうん、最近の人間関係ってそんなカンジで、あけすけにケンカするより息苦しい‥‥
そんな中でも“応援団”はいるってのが、
ハルノさんの人徳によるところが大きいんでしょうが、ちょっとホッとします。
ハルノさん、頑張って!

口は悪いけど、動物への愛情が深い名医・D動物院長、
いいキャラですねぇ。
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この本で「そうそう、私もそうなのよー」と思いながら読んだのは、
この本のタイトルにもなっている
「それでも猫は出かけていく」というところ。
 おおむね4半世紀、どっぷり猫と付き合ってきた私ですが、いまだにどうしても苦手なことが 2つあります。猫に食事制限をすることと、行動制限をすることです。

私も、猫の食事は、いつもカリカリは出しっぱなしだし、
いじられると(あれ?猫が食べ物を「いじる」ってもしかして方言?
先日「猫にばりかかれた」ってのが岐阜の方言だと知って驚いたけど)
つい、しょーがないなぁーと、与えてしまうんですよね。
これはやっぱり、私が、のべつ幕無しに甘いモノなどを口にしている
食いしん坊なんだからでしょうねぇ。健康診断で太りすぎと注意されても、
ダイエットなどハナから無理と諦めてます。
我が家の猫もメタボになっちゃうのは当然か。

行動制限も、街の猫は室内飼いにするのが一番だとは思うんですが、
我が家のタビは、外トイレ派なんですよね。
いろんなトイレ試したりもしたけど、やっぱり出て行ってしまう。

猫トイレについては、この本で、
我家の猫トイレは、スーパーやコンビニでも売っている、ごくごく一般的な、あの「重い・散らばる・ ホコリが立つ」とさして評判もよろしくない、「ベントナイト」主成分の猫砂を使っています。‥(中略)‥ ベントナイト製の砂は、尿比重が高いと固まらず、逆に尿比重が低ければ、ベッタリと固まるのです。 ‥(中略)‥健康な猫のおしっこは、皆様ご存知、きれいな“ブリオッシュ型”に固まります。しかし ‥(中略)‥高齢で腎機能が低下し、薄い水のようなおしっこだと、ベッタリとコンクリートのように 固まり、シャベルの柄さえ折れるほどです。

気にしたことなかったけど、ウチの猫砂、成分を見たらやっぱり「ベントナイト」だった。
そっかー、今はクロが使うので“ブリオッシュ型”に固まった砂を片付けることが多いけど、
底に平べったく固まっていることもあったなー。今までそんな違いを気にしたことなかったけど、
尿道結石で腎機能が落ちているタビがここでおしっこしてくれれば、
健康状態をチェックできるんですけどねぇー。

ずっと昔、ニャンとも清潔トイレも使ったことあるんですが、
ウチの猫にはチップが大きすぎて埋めにくいようなんです。
部屋で使うには散らかりにくくていいし、
オシッコはこのトイレすごくいいんですが、
大は埋めにくいってのもあって、モロに匂うんですよね
(私が使ったのはだいぶ以前のことなので、今は改善されているかもしれませんが)
我が家は土間に置いているので少々散らかってもいいので、安い猫砂に戻しました。


図書館に、ハルノ宵子さんが【追想・画】を書かれた、
吉本隆明『開店休業』もあったので、借りてきました。

開店休業

開店休業

  • 作者: 吉本 隆明
  • 出版社/メーカー: プレジデント社
  • 発売日: 2013/04/23
  • メディア: 単行本



「戦後思想界の巨人」とも呼ばれた吉本隆明の最後の自筆連載、
「dancyu」食エッセイに、ハルノ宵子が追想文と画を書き下ろした本。

吉本隆明をマトモに読んだことがない私には、失礼だけど
なんか半分ボケた老人の繰り言のような文章だなぁと。

この本で、ハルノ宵子の追想文
 さて――父が病院で亡くなった夜、実は落語の“長屋噺”のようなドタバタ劇で、一時間後にはすでに 家に父を運び込んでいた。深夜の三時半、私は〆切をかかえていた。イラストのラフを今日中に 仕上げなければ、後々の騒ぎもあるだろうし、最終〆切に間に合わない。
 父の遺体の上に“ロックアイス”を一袋置き、“外界”を一切遮断して仕事にかかった。上がったのは 朝七時半だった。死んでる父に「どーだ! やったぜ!誉めてくれよ」とぴらぴらとラフを見せた。


という、壮絶な状態で描かれたのが、『それでも‥‥』の
その41なんですねぇ。

『それでも猫は出かけていく』を読んでいると、
大島弓子『グーグーだって猫である』を思い出しました。
『グーグー‥‥』の大島弓子さんも卵巣腫瘍の手術を受けたり、外猫の避妊をしたりされてますね――

グーグーだって猫である コミック 全6巻完結セット

グーグーだって猫である コミック 全6巻完結セット

  • 作者: 大島 弓子
  • 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
  • 発売日: 2011/09/23
  • メディア: 単行本



『それでも‥‥』の中に、
猫にのめり込むのは独身女性が多いのです。と。
それはなぜかとハルノさんの考察は、
何の組織にも権威にも属さず、ただ独り“荒野”に立つのは疲れるのです。 特にその“疲れ”にさらされているのが、仕事も年齢も年収も関係なく 独身女性なのだと思います。共感能力の高い猫という生き物は、そっと側に寄り添うのです。

要するに、「心のすき間に“猫”」なんだそう。
うーん、まぁ、何の役にも立たない(現在ではネズミ獲りの役目も要りませんしね)
猫だけど、その存在だけで癒されるってとこなのかな。

この本、図書館で借りて、しっかり読んだんだけど、欲しくなってしまって‥‥
(借りてきた図書館の本にも、所々ページを折った跡があって、
 こらー、でも、わかるなと)
アソシエイトプログラムでギフト券が送信されてきたこともあり
(今は500円以上で送られてくるんですね。)
amazonでポチッとしてしまいました。

それでも猫は出かけていく

それでも猫は出かけていく

  • 作者: ハルノ 宵子
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2014/05/09
  • メディア: 単行本



外猫の避妊を続けていらっしゃることへの、応援の気持ちを込めて‥‥

楽天ブックス


我家の猫砂は今これを使っています

部屋の中に置く猫トイレにはお勧めしませんが。

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村上春樹『1Q84』 [本]

村上春樹の『1Q84』を読み終えた。村上春樹の本は出る前からベストセラーが決まっているようだが、この長い小説も発表当時(1、2巻が書下ろしで2009年5月に、3巻もやはり書下ろしで2010年4月に発売された)かなり話題になったと覚えている。それらの本が図書館の棚に三冊並んでいるのを見て、ちょっと感慨にふけってしまった。

1Q84 BOOK 1

1Q84 BOOK 1

  • 作者: 村上 春樹
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2009/05/29
  • メディア: 単行本



1Q84 BOOK 2

1Q84 BOOK 2

  • 作者: 村上 春樹
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2009/05/29
  • メディア: 単行本



1Q84 BOOK 3

1Q84 BOOK 3

  • 作者: 村上 春樹
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2010/04/16
  • メディア: ハードカバー


世間には村上春樹が大好きという人は多いらしいが、私は『1Q84』についてこれまで全く知識を入れずに来た。三冊の分厚い本はとてもシンプルな装丁の本で、タイトルから、これが多分1984年を舞台にした小説だろうということくらいはわかったが、それ以上の情報(写真とかイラストとか)はない。

私にはそんな、何も知識のないという状態で読んで、最後はどうなるのか、
チェーホフの小説作法は踏襲されるのか?
というミステリー小説のようなワクワク感も味わうことができたのは良かったと思う。

以下、ネタバレも含むので、未読の方はご用心ください。


1巻の扉に、ペーパー・ムーンの一節が提示されています。
この言葉は小説を読み進むほど暗示的に思えてきます。

ここは見世物の世界
何から何までつくりもの
でも私を信じてくれたなら
すべてが本物になる

"It's Only a Paper Moon"
(E.Y. Harburg & Haold Arlen)


この長編小説をどのように読んだらいいのだろうと私は思った。単なるファンタジーなのか。あちこちに作者のメッセージが隠されているのだろうか。私は村上春樹が好きなのか嫌いなのかよくわからない。好きと言えば好きなのだろう。こんな長い小説を、私はそんなに忙しい人間ではないが、それでも日常のやらねばならないことは多々ある中で、かなりの時間を割いて読んでしまうのだから。村上春樹の小説はミステリーとは違う。読み終わっても謎は謎のまま残る。重要人物でさえ最後どこかへ行ってそのままというラストもあった。それに比べれば『1Q84』はラストが恋愛小説のようなハッピーエンド風になっていて、この終わり方は「とてもロマンチックだ」(←「とても」とまではいかないが)で私は嫌いではない。ま、2巻で終わっても、これはこれで村上春樹らしいラストで、3巻は蛇足だと思わないでもない。だいたいこの物語は長すぎるし。私はてっきり青豆は1Q84の世界から消えたと思ったのに。

村上春樹の本はいつもその文章に感心させられる。本を読んでいる間、自分の何気ない日常が村上春樹の小説になったように感じられる。

しーちゃんは朝起きて台所に行き、やかんに湯を沸かしコーヒーを作った。ウインナーともやしを炒め、昨夜の残りの冷えたごはんを電子レンジで温めて食べた。‥‥とかって。

パスタとかチーズとか、白ワインがある食卓だと、もっといいんだけど(笑)

そして比喩が素晴らしい。
中年の運転手は、まるて舳先に立って不吉な潮目を読む老練な漁師のように、前方に途切れなく並んだ車の列を、ただ口を閉ざして見つめていた。

しかし、この運転手は結局は何だったんだろう? 1Q84へ通じる道を知っていたのか?
物語の冒頭に出てきたきりだし。
そういうことをしますと、そのあとの日常がいつもとは少し違って見えてくるかもしれません。でも見かけにだまされないように。現実というのは常にひとつきりです。
この暗示的なセリフはどんな意味? 青豆は別の世界へ来てしまったのではないの?

1Q84というのはよくあるSFの設定のパラレル・ワールドとは全く違うようだ。
青豆がそちらの世界に行ったのは首都高からとしても、天吾は?
ふかえりの「空気さなぎ」の書き直しをしたから?
青豆に仕事を依頼した柳屋敷の老婦人やタマルは??

まぁ、この小説では謎は謎のまま、こういうものだと読み進んでいくしかないのかな。
説明しなくてはわからないということは説明してもわからないということだ

私はジョージ・オーウェルも『1984年』という作品も知らなかったが、
1949年に刊行されたジョージ・オーウェルの近未来小説だそうだ。
そこにはスターリンを寓意化した「ビッグ・ブラザー」という独裁者が登場する。
『1Q84』は現在から過去を描いた小説で、そこには「リトル・ピープル」なる不思議なものが登場する。

未来を舞台に設定した物語を作った場合、設定した未来の年はやがてやってくる。
『鉄腕アトム』はアトム誕生を2003年と設定した。幼い私たちは21世紀になったら、どんな素晴らしい科学の世界が待っているだろうかとワクワクしたものだ。
現在から過去を描く場合は、過去は1つしかない。もちろん立場が違えば違って見えるのだが、事実は一つだ。しかし『1Q84』ではそうではない。

「こうであったかもしれない」過去が、その暗い鏡に浮かび上がらせるのは、「そうではなかったかもしれない」現在の姿だ。(1巻の帯のコピー)
‥‥うーん??

1984年というのは、もしかしたら日本が一番幸福だった時代ではないだろうかと思う。
これは私が天吾や青豆の年齢設定より3つ若い、1984年に27歳であったということからよけい感じるのかもしれないが、高度成長時代が終わり、十分に生活が豊かになった日本で、まだ阪神大震災も地下鉄サリン事件も、バブル崩壊も知らなかった時代。

歴史が人に示してくれる最も重要な命題は「当時、先のことは誰にもわかりせんでした」ということかもしれない。

そして何より現在と違うのは、インターネットの普及だろう。
1984年にヤナーチェックの『シンフォニエッタ』を聴きたいと思ったら、かなり都会のレコード店まで行ってLPを探して買わねばならない。
あ、それと「エアチェック」って方法があった!
FMラジオで目当ての曲が流れるのを専門の雑誌でチェックして、カセットデッキでテープに録音したっけ。

国会図書館に通い、新聞の縮刷版やら年間やらを机に積み上げ、一日がかりで情報を探る時代」であったわけだ。

それが今では、YouTubeで簡単に聴くことができる。

もっと晴れやかなファンファーレをイメージしていたのに(『2001年宇宙の旅』の『ツァラトゥストラかく語りき』のような)なんか不協和音でざわざわするような感じが、まぁかえってこの作品には合っているのかな。

しかし、村上春樹のこの文体で、例えば青豆が巨大な宗教組織「さきがけ」と戦うみたいな、現実的で娯楽性の強いハードボイルド小説にしたら、大ヒットすると思うけどなー。
(もう大ヒットしているけど、さらに大、大ヒットってことね)
銃の描写など素晴らしい! セックス・シーンも多いしさー(^◇^)
まー、よくわからん(いろんな読み方ができる)ところが、毎年ノーベル文学賞候補に挙げられるほどの作家になった理由かも。ピカソがすごいデッサン力を持っていながら、よくわからん(と一般には思われる)絵を描くみたいな?


村上春樹『1Q84』 新潮社公式サイト: http://1q84.shinchosha.co.jp/

こちらにみんなが描いた というイラストコーナーがあり、なかなか面白かったので、私も描いてみました。
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文庫だと6巻で完結のようです。
1Q84 BOOK1-3 文庫 全6巻 完結セット (新潮文庫)

1Q84 BOOK1-3 文庫 全6巻 完結セット (新潮文庫)

  • 作者: 村上 春樹
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2012/05/28
  • メディア: 文庫

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図書館に返却に行ったら、ガイド本を見つけました。 舞台となった首都高や街の写真などもあって面白い。 2巻までのところで解説してあるので、3巻を読むと違っているところもあるけど。
村上春樹「1Q84」の世界を深読みする本

村上春樹「1Q84」の世界を深読みする本

  • 作者: 空気さなぎ調査委員会
  • 出版社/メーカー: ぶんか社
  • 発売日: 2009/08
  • メディア: 単行本

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赤座憲久『かかみ野の土』『かかみ野の空』 [本]

11月3日(日)、各務原市各務の村国神社にある農村歌舞伎舞台
「村国座」で、村国男依を題材にした創作歌舞伎を見てきたことは
前記事に書きました。

村国男依(むらくに の おより)を祭神に祀る村国神社がある各務原市では、
村国男依はオペラになったり、市の広報誌に今、
「壬申のあとさき」って連載小説が載っていたりするので、
まぁわりと有名なんですが、全国的には知っている人は少ないでしょうね。

壬申の乱で大海人皇子の将軍として活躍。その功績を認められ、
連姓を与えられ貴族の仲間入りをしたと、「日本書紀」に書いてあるそうで、
壬申の乱を扱った歴史書や小説とかには(ちょっとだけのことが多いけど)
出てきたりします。

各務原出身の児童文学者 赤座憲久(あかざ のりひさ)
『かかみ野の土』と『かかみ野の空』という作品を紹介します。

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『かかみ野の土』は、
村国男依(オヨリ)の子・志賀麿(シガマロ)の目を通して描かれる壬申の乱。
(志賀麿も男依の息子として日本書紀に名が記されているそう。)

各務原の農家に生まれた私としては、出だしの
かかみ野の土は、におう。どこを掘っても、黒ぐろとにおう。
って文に、ちょっと涙が出そうになっちゃいます。
そう、各務原の土って真っ黒なんですよ!

子どもの頃は土って真っ黒なものだって思ってたので、ヨソの土地の
褐色や灰色に近いような土を見て驚いたものです。

なので、壬申の乱で死んだ村国の里人が葬られている近江の塚に、
かかみ野の黒い土を運んでやるってオヨリやシガマロの想い、すごくわかる。
先の大戦で異郷で亡くなった兵士達への想いにも重なるんだろうなと。

これからまんだ、生きたかった人たちばっかしじゃ

シガマロの岐阜弁のセリフに涙が出ます。

一家の働き手、愛する夫、息子、父を戦で亡くした人の悲しみも、
著者が先の大戦の時に見たり聞いたりして実感したことなんだろうなと。

(赤座憲久さん、1927年生まれだそう。敗戦の年は18歳‥‥。
 ネットで検索していたら、2012年8月31日に亡くなったとありました。)

壬申の乱について、大海人皇子や大友皇子などの権力者側から書いたものは
多くあります(トンデモ本のようなものも多いし)が、
布を赤く染めるためにアカネ草を集めたり、
瀬田川を渡るためのイカダ橋をつくるために家を壊される人々
‥‥そんな庶民の側から描いた話は、
いつの時代も戦争は悲劇でしかないってことがわかります。

勝ち戦で、「この戦いに勝ったらくらしがうんとよくなる」って思ったのに、
新しい都のための瓦を焼くために、子どもも辛い土踏みの仕事をしなくてはならない
日々は変わらない‥‥そんなシガマロの失望のような思い。

この作品、1985年10月16日から翌年4月21日まで、
岐阜日日新聞(現・岐阜新聞)の朝刊に連載したものを基にして仕上げたものだそう。
児童文学者の赤座憲久だけあって、読者対象は8歳以上上限なしということで、
この本、創作児童文学というジャンルに入っていて、文字も大きいし、
難しい漢字にはルビがふってあるし、すごくわかりやすいけど、
大人が読んでも充分に面白いし、感動します。

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続編の『かかみ野の空』は、1986年12月4日から翌年4月3日まで、
岐阜日日新聞に連載したものを基に仕上げられた本。
壬申の乱の後、高市王子の舎人となったシガマロ。
王位継承をめぐる対立、大津王子の刑死、持統天皇の即位などが
描かれます。

この2冊、たしか息子の小学校(幼稚園だったかな?)を通じて、
案内があり、購入申込をした本だったような。

壬申の乱あたりの歴史に興味がある人、各務原の歴史に興味がある人、
村国男依について知りたい人にお薦めの本です。


かかみ野の土―壬申の乱 (こみね創作児童文学)

かかみ野の土―壬申の乱 (こみね創作児童文学)

  • 作者: 赤座 憲久
  • 出版社/メーカー: 小峰書店
  • 発売日: 1988/12
  • メディア: 単行本



かかみ野の空―女王の時代 (こみね創作児童文学)

かかみ野の空―女王の時代 (こみね創作児童文学)

  • 作者: 赤座 憲久
  • 出版社/メーカー: 小峰書店
  • 発売日: 1989/02
  • メディア: ハードカバー



村国男依は、持統天皇を描いた、里中満智子『天上の虹』にも
ちょっとだけ登場します。
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中村文則『迷宮』 [本]

図書館で借りた中村文則『惑いの森~50ストーリーズ~』を
(感想はこちら: http://shizukozb.blog.so-net.ne.jp/2013-01-14 )
返却に行った時に、棚にあったのを見つけて借りてきて読みました。

中村文則『迷宮』

迷宮

迷宮

  • 作者: 中村 文則
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2012/06/29
  • メディア: 単行本


発出は「新潮」2012年1月号
中村文則の11冊目の本になるそうです。
デビューして10年だとか。

活字も大きめで、そんなに長い作品でないので、すぐ読めました。
最初の印象はあまり良くなかったです。
ヘンにミステリーっぽくしているのが‥‥
その前に東野圭吾『容疑者Xの献身』と宮部みゆき『模倣犯』を読んでいたので、
うーん、やっぱりミステリーの面白さでは敵わないなーって。

もちろんこの作品、そんなミステリーの「謎」を楽しむものではないのはわかってます。
「僕」の内面のぐちゃぐちゃを読んでいくものなのだと。
でも、その「僕」のぐちゃぐちゃ、なんかイマイチ感情移入できなかったんですよね。

「僕」の中にいた「R」という存在について、著者はあとがきで
昔の僕の中に実際にいた存在だった。今でもいると思う。」って書いてますが、
自分の中にいる別人格、そんな感覚は私もすごくわかります。
私も幼い頃、そんな人格を作っていたような気もする。
それでも主人公のこのぐちゃぐちゃ「あぁ、なんでこんなことするかなぁー」って‥‥

職場のボスに「お前が今抱えている虚無みたいなママゴト」って言われているけど、
どっちかってと、私も(年齢的にも)このボスのような目線で見ちゃってるのかな。
ちょっとしたミスを見つけて社員を辞めさせようとする好きになれない経営者だけど。

本の帯には
僕が、ある理由で、知り合った女性は、一家殺人事件の遺児だった――  その迷宮事件へ、彼女へ、僕は、のめりこんでいく。」とあります。

ミステリー的にはなかなか魅力的な事件ではあります。
迷宮入りとなった殺人事件
密室状態の家で、父と母は刺殺され、兄は殴打されて毒を飲まされて致死。
そして母は衣服を脱がされ、色鮮やかな折鶴で埋まっている。
彼女は部屋で睡眠薬入りのジュースを飲み、生き残る。

平凡な公務員であった父親、不釣合いなほど美しい母親。
父は美しすぎる母がいつか自分から離れていってしまうのではないかという嫉妬に苦しめられ、
全ての出入り口に監視カメラをつけ、母の自転車を壊してしまうほどになる。
母は家の中を執拗に掃除するようになり、兄は少しずつ壊れていく。

でも、この密室殺人事件、長女の告白があるのですが、
謎が全てすっきりと解決しましたって訳でもない。

すべてがぐちゃぐちゃ、すべてが迷宮って印象の作品‥‥

そして、こういう内容だからか、私が好きなこの著者の文体
――キビキビとした緊張感のある文体――が、今回あまり感じられなかったってことも、
この作品、なんだかなーって思った一つの理由。
文章に傍点をつけたり、書体を変えたりするのも、私好きじゃないんです。

昔の作品が良かったってのは、言っても何の役にも立たないってのはわかってますが、
この著者には、ヘンに娯楽的な要素を入れないで欲しいなって思うんですよね。

中村文則の著作リスト
1冊目『銃』(新潮社)2003.3――新潮新人賞受賞作、芥川賞候補作
2冊目『遮光』(新潮社)2004.6――野間文芸新人賞受賞作
3冊目『土の中の子供』(新潮社)2005.7――芥川賞受賞作
4冊目『悪意の手記』(新潮社)2005.8
5冊目『最後の命』(講談社)2007.6
6冊目『何もかも憂鬱な夜に』(集英社)2009.3
7冊目『世界の果て』(文藝春秋)2009.5
8冊目『掏摸(スリ)』(河出書房新社)2009.10――大江健三郎賞受賞作
9冊目『悪と仮面のルール』(講談社)2010.7
10冊目『王国』(河出書房新社)2011.10
11冊目『迷宮』(新潮社)2012.6
12冊目『惑いの森~50ストーリーズ』(イースト・プレス)2012.9

中村文則公式サイト http://www.nakamurafuminori.jp/ を見てまとめました。
本のタイトルのリンクをクリックすると、私の感想記事が開きます。








タグ:中村文則
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中村文則『惑いの森~50ストーリーズ~』 [本]

暮に、図書館の中村文則のコーナーに新しい本があるのを発見して借りてきました。
副題に「50ストーリーズ」とあるように、50の短編が収められています。

惑いの森 ~50ストーリーズ~

惑いの森 ~50ストーリーズ~

  • 作者: 中村文則
  • 出版社/メーカー: イースト・プレス
  • 発売日: 2012/09/21
  • メディア: 単行本


あとがきすらも、「Nのあとがき」という50番目の話なんです。
その「Nのあとがき」によれば、
「この本は、アマゾン上にあるWEB文芸誌『MATOGROSSO』でのショートストーリー連載(全28話)に、新たに書き下ろした22話を加えて、『50ストーリーズ』としたものです。
 2話をボーナストラックみたいに書き下ろして、『30ストーリーズ』にすることも考えたのだけど、元々WEBで無料で読めたものを手に取ってくれた人に対して、もっと何かがしたいと思った。なので思い切って22話書き下ろすことにしたのだけど、随分時間がかかってしまった」
とのこと。いかにもこの著者らしい真面目なところだなって。

この人の本、いつも装丁がとても素敵なんですが、今回もとても素敵。
松倉香子のイラストが表紙だけでなく、本文中にも使われていて、
中村文則の詩的に研ぎ澄まされた緊張感がある文章と合わさって、すごくいい!
私、中村文則は文章が好きなので、短編がいいんじゃないかって思ってたんです。
特に私がいつも感心するのは出だしの文の上手さ!
今まで私が読んだこの人の本の中で一番面白いのは『掏摸[スリ]』だけど、
短編集の『世界の果て』のシュールでちょっと諧謔味のある話
(「不条理」なんて懐かしい言葉を思い出してしまう)好きでした。

で、この50の話、『掏摸[スリ]』や『王国』など、この人の長編作品の世界を思わせる
裏社会を生きる人々の暗い話(それぞれつながっているような、いないような‥‥)や、
シュールな話、切ない話、ちょっとメルヘンっぽい話‥‥
そして、著者自身を自嘲気味にブラックに登場させる「Nの‥‥」シリーズ(?)
‥‥ふふふ、中村文則さん、ちょっと行き詰まったりしてますか?でも私、
結構このシリーズ好きです。夜中に自販機で缶コーヒー買って、
パトカーにドキドキするなんてくだり、状況が思い浮かぶようで。
でも、缶コーヒーあまり飲むのは健康に良くないですよー。

そんな話が50話も収められている本なので、なんかとてもおトクな気分になれます。

あとがきで「祈り」と「鐘」が、東日本大震災が起きたときに書かれた作品って
知って読むと、あぁ、再生への祈りのようなものが込められているなとか、

マトグロッソに掲載されたものと書き下ろし作品が混在して載せられているんだけど、
目次で印がついて、わかるようになっているので、書き下ろしかどうかって当てる
つもりで読んでいくのも面白い。

黒いページに白い文字で印刷された「通夜」現実の猥雑さみたいなものが
ちょっとブラックに表現されていていいなって。
ネコ好きとしては、「老人とネコ」なんかも味があって好きです。

今まで中村文則の本を読んだことがない人にも、気軽に読めるのでオススメです。
「出口なし」がマトグロッソ上で読めるようですが、この話もシュールで好きな話です。

「マトグロッソ」の最新情報と入口へのバナーがあるページはこちら
http://www.eastpress.co.jp/matogrosso/
「MATOGROSSO(マトグロッソ)」とは、ポルトガル語で「深い森」を意味する言葉だそう。
(現在、マトグロッソ上で読める『惑いの森』作品は「出口なし」の一篇のみのようですが、
『惑いの森~50ストーリーズ~』刊行記念の中村文則×松倉香子の対談が読めます。)

今までの感想はこちら
中村文則「土の中の子供」 http://shizukozb.blog.so-net.ne.jp/2008-01-14
中村文則「銃」「悪意の手記」 http://shizukozb.blog.so-net.ne.jp/2008-01-27
中村文則「最後の命」 http://shizukozb.blog.so-net.ne.jp/2008-02-05
中村文則『世界の果て』 http://shizukozb.blog.so-net.ne.jp/2009-09-23
中村文則『何もかも憂鬱な夜に』 http://shizukozb.blog.so-net.ne.jp/2009-10-23
中村文則『悪と仮面のルール』 http://shizukozb.blog.so-net.ne.jp/2010-12-10
中村文則『掏摸[スリ]』 http://shizukozb.blog.so-net.ne.jp/2011-01-20

この後、『王国』も読んだんですが‥‥うーん、ちょっとこの作品‥‥私には
合わなかったというか『掏摸[スリ]』の兄妹編として、ある特殊な仕事をしている
女性の目を通して描かれていて、『掏摸[スリ]』に出てくる登場人物が
こちらにも出てきたりしているところはなかなか面白く読んだんだけど‥‥やっぱり
「悪」がちょっと観念すぎっていうか‥‥

あっ、そうだ『遮光』も読んでますが感想書いてないですね。

中村文則の公式サイトはこちら:http://www.nakamurafuminori.jp/
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宮部みゆき『模倣犯』 [本]

ずいぶん前に話題になったこの作品、
分厚い本が上下巻揃って図書館の棚にあったので、
お正月休みに読むのにいいかなって借りてきたんです。

模倣犯〈上〉

模倣犯〈上〉

  • 作者: 宮部 みゆき
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2001/03
  • メディア: 単行本



模倣犯〈下〉

模倣犯〈下〉

  • 作者: 宮部 みゆき
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2001/03
  • メディア: 単行本



1月2日から読み始めて、7日に読み終わりました。
確かに面白かった。だけど、とにかく長い!

分厚い上下巻に、二段組の本文。結構夢中で長い時間読んでいるのに、
残りのページ数がちっとも減らないように感じました。

最初のうちは、いろんな登場人物が出てきて、それまでの話とは全く違うように
感じて‥‥それぞれ細かな描写があるし‥‥今までの話の続きはどうなったのかって、
そんなイライラ感。

わりと早いところで犯人が明かされるので、それからは、
「なんでこんな簡単なコトに気付かないんだ」って、
まるで見当違いの登場人物たちにイラっとしながら読んでいきました。

だって、ねぇ‥‥(以下、ネタバレ含みます)

高井由美子が警察が兄が無実だという話を聞いてくれないって、
わざわさルポライターに連絡する?
テレビのワイドショーあたりをもっとうまく利用できなかったものかなぁ?
それまで家のまわりにマスコミが詰め掛けていたんでしょ?
高井由美子の主張が視聴者の反感を買うかもしれないけど、
全く見当違いなケチな容疑者を「真犯人」とかって
出したりするほどの業界だし、もっとセンセーショナルに取り上げられても
いいような気がするなぁ。まぁ、どっちにしても由美子には辛いことだけど、
なんか由美子がかわいそうで仕方ないんだけど。
こっちは真犯人がわかっているから、周囲の反応に、なんでもっときちんと
話を聞かないんだって、ルポライターの滋子がバカっぽく思えるし、
由美子の見合い相手の刑事も、ちゃんと言い分を聞いてやればいいのにってイライラする。
‥‥それがこの作品の「味」なのかもしれないけど。謎解きのミステリーではないのだから。

それに、いくら盲点かもしれないけど、「ピース」がやったことは危険すぎる。
ボイスチェンジャーを通してテレビ局にかけてきた電話が先と後とで違うって
気がつく視聴者がいるくらいだし、ネット上では由美子が共犯者だみたいな
無責任な書き込みだってあるくらいなんだから、「コイツが犯人じゃね?」って
半分は冗談みたいな、やっかみ‥‥「ピース」はネクラ人間からはやっかまれるような
爽やかな印象なんだし‥‥みたいな声があがってもいいような気がする。
そしたら、声紋鑑定をすればスグ犯人がわかってしまうわけだし。
まぁ、警察とか、いわゆる良識ある人ほど犯人がこんなことをするとは思わないんだろうけど。

あれだけ人気者になれば、過去のことも詮索されるよね。
お母様はお元気ですか?って、犯罪とは全く関係なく聞かれることもあるだろうし。
彼が真犯人だって、滋子に挑発されなくても――あぁ「模倣犯」ってタイトルは
ここからつけてるのね――そのうちシッポを出してしまうだろう。
こんなことを始めなければ、うまく隠れていることができたかもしれないのに。

この本は『週刊ポスト』1995年11月10日号~1999年10月15日号に連載したものに
加筆改編して2001年4月20日に初版第一刷が小学館から発行されたもの。

2002年にはSMAPの中居クン主演で映画化もされたそうですね。
これだけの長篇作品を映画化するのはちょっと無理があるのではって気もしますが。
テレビドラマならもっと長くできるだろうけど、登場人物が複雑に入り組んでいるし、
やっぱり難しいかなぁ。

そして、時代だなぁって感じる箇所もそこここに。
まだ携帯電話はそんなに普及しておらず、
インターネットも出てきてはいるけど、かなり若者限定みたいな状態。
現在みたいに、多くの人がブログやSNSで自分の意見や日常生活を公開しているのとは違い、
ホームページの掲示板などに書き込むのは、かなりオタクみたいな人ってカンジ。

なので刑事も自分の娘にお小遣いやって情報を探させたりしていたり。

現在のようにほとんどの人が携帯電話を持っている状況では、
犯罪も捜査も変わってくるだろうか?
少なくともすれ違いドラマみたいなのはできなくなったよね。

伏線にする予定(?)の話が、そのまま宙ぶらりん状態になってるのも気になるなぁ。
なのでこの作品、やたらに長くなっちゃってるんですよね。

小樽で「ピース」とヒロミが女性拉致の未遂をやってたってのは、どうなのかなぁ?
なんでわざわざそんな遠くでやらなきゃならないの?
あの女性拉致は、別荘というアジトがあったからこそ、
死体の隠し場所に困らなかったわけだし。
それに、飛行機で被害者が「ピース」と乗り合わせて、
その時の相手だって気がつくって話、そのままになっちゃったよね。

ヒロミの見つからない携帯電話を子供が拾ったって話もそのまま。

「建築家」のエピソードは興味深いけど、あまりこのストーリーとは関係なかったし

そんな中途半端なエピソードはいっぱいあるのに、
「ピース」の少年時代の話とか、母親を殺した時の話は全く出てこない。
なんか「ピース」の印象が薄っぺらなのは、そんな内面の描写が少ないせいじゃないだろうか。

こういう話だから、もちろん筆者は犯罪のトリックとか、大まかな筋は決めてたんだろうけど、
なんか話があっちこっち飛んじゃってて、かなり気分的に書いているような気もする。
連載途中で細かいトコなんか変わってきちゃってるんじゃない?

犯罪者たちの、精神的に幼いフワフワした生活と対比させる意図だろうけど、
豆腐屋を営む有馬や蕎麦屋のカズが「地に足をつけた」生活って、
それぞれかなり筆者に「ヒイキ」されて描かれているように感じた。

市井にこういう気骨があって、学校の成績ではなく「頭がいい」人は多いんだろうけど、
それにしても‥‥ちょっとカッコ良く喋りすぎているような気も。

カズはいわゆる識字障害だったのかな。人と見え方が違って、真面目に勉強しているのに
文字が覚えられなくて、「バカ、グズ」って思われて少年時代を送ったわけだけど、
「ピース」やヒロミと最後に話をするところは、ちょっとリアリティーがないほど
熱弁でカッコいい。でもその後の展開は、結局は家族まで犯罪の被害者にしてしまったわけで。
もうちょっと事前になんとかできると――妹だけにでもうちあけておくとかね――
まだ救いようもあったのに。

でも、こういう町の豆腐屋とか親子で営む蕎麦屋って、今の日本じゃ絶滅寸前だよね。

この話とは関係ないけど、カズが人と見え方が違うってとこを読んでいて、
私は今頃になって気がついたんだけど、人の顔の見分けが困難っていうかすごく苦手。
ドラマなどで刑事が容疑者の写真を持って「この人を見ませんでしたか?」って
尋ねて回るのがすごく不思議でしょうがなかった。
写真見たって、その人かどうかわからないでしょ?って。
人が「どこかで会いましたよね」って言うのも不思議だった。
一度や二度会ったくらいでわからないでしょ?って思ってたんだけど、
どうやらそういうことができる人はたくさんいるらしい。
私はダメ‥‥どのくらいダメかっていうと、
SMAPのメンバーの見分けはつくようになったけど、
嵐のメンバーの見分けはつかないってレベル。
もちろん、芸能界のこと詳しくないってこともあるだろうけど、
テレビに出てる人の顔がちっとも覚えられないから、芸能界に興味もないし、
ドラマや映画にそんなに夢中になれないんだって、ホントに最近気がついた。
人は誰でも自分と同じように見たり感じたりしているだろうって思ってるけど、
実は全く違うように感じているかもしれないってのは、考えてみたらコワイことだなぁ。

『模倣犯』は新潮文庫にもなっています。全5巻。
通勤途中などで読むには文庫の方がいいでしょうね。
色々突っ込み入れつつも、これだけの長い作品を夢中になって読み通してしまったってのは、
やっぱり面白かったんでしょうね。

模倣犯1 (新潮文庫)

模倣犯1 (新潮文庫)

  • 作者: 宮部 みゆき
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2005/11/26
  • メディア: 文庫



模倣犯2 (新潮文庫)

模倣犯2 (新潮文庫)

  • 作者: 宮部 みゆき
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2005/11/26
  • メディア: 文庫



模倣犯3 (新潮文庫)

模倣犯3 (新潮文庫)

  • 作者: 宮部 みゆき
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2005/11/26
  • メディア: 文庫



模倣犯〈4〉 (新潮文庫)

模倣犯〈4〉 (新潮文庫)

  • 作者: 宮部 みゆき
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2005/12
  • メディア: 文庫



模倣犯〈5〉 (新潮文庫)

模倣犯〈5〉 (新潮文庫)

  • 作者: 宮部 みゆき
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2005/12
  • メディア: 文庫



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あびるやすみつ「『アフィリエイト』の真実とノウハウ」 [本]

図書館でたまたま見つけたこの本。
「本気で稼ぐための『アフィリエイト』の真実とノウハウ」

本気で稼ぐための「アフィリエイト」の真実とノウハウ

本気で稼ぐための「アフィリエイト」の真実とノウハウ

  • 作者: あびる やすみつ
  • 出版社/メーカー: 秀和システム
  • 発売日: 2010/05
  • メディア: 単行本


私こういうハウツー本結構好きなんですよね。
パラパラっと読んでみたら面白くて借りてきてしまいました。

小林智子さんの『主婦もかせげるパソコンで月収30万』とか、
『主婦もかせげるアフィリエイトで月収50万』って本を
(やっぱり図書館で)読んで、
ブログで稼げるらしいって始めてみたアフィリエイト。

その時の記事はこちら:アフィリエイトってどうなんでしょう?http://shizukozb.blog.so-net.ne.jp/2009-06-01

この時(2009年6月)からのアフィリエイトの成果はというと‥‥
amazonは、この時獲得金額88円だったのですが、2011年11月に、
ギフト券での支払い対象1.500円を満たして、
初めてamazonのギフト券1,522円がメールで送られてきました。

バリューコマースは、appleのアフィリエイトは売れないからって
解除されちゃいました。他は、そんなにバナー貼ってないせいもありますが、
クリック数ですら月に10クリック以下。今までの報酬も0です。

今年5月から、バラの画像を使いたいからって始めた楽天のアフィリエイト。
なんで私好みの画像がどこのサイトでも出るの?ってびっくりした
楽天のモーションウィジェット。

へー、これいいなって、自分のブログに貼ってみたら、
そちらをクリックして10万円以上の品物を買ってくれた人がいるらしいんです。
なので、まだ確定前なんだけど、いきなり1,000ポイント以上ついちゃって、
ちょっと驚きでした。

まぁ、あまり熱心にもやってない私のアフィリエイトですが、こんな状態なので、
アフィリエイトで月に何十万円も稼いでいる人なんているのかな?
リスクもノルマもないし、趣味で書いてるブログなので、私は、
3年で1,500円もらって嬉しいんですが、仕事としたら内職としても割が合わない。
ブログで簡単に儲かるとかってやってるのって、なんか怪しいって。

この本の前半はそんな「アフィリエイト」の真実というか暴露。
・「確実に儲かりますよ」と声をかけてくるサイト制作会社
確実に儲かるならサイト制作会社が自分でサイトを作ればいいと思うのですが。

・高い情報商材販売者・スパム行為を行うツールの販売者‥‥
スパムツールで、ワードサラダと言われる無意味な記事のサイトを量産する。
ひどいなと思ったのが、病気系キーワードでサイトを量産する。
病気にかかった人は必死なので、検索結果の上位じゃなくてもずーっと
見てくれるからって。

こんなアフィリエイト周辺のダークサイドを書いた前半のかなりの部分が、
Googleブックスでタダで読めます。
「『アフィリエイト』の真実とノウハウ」特設サイトhttp://twittericonmaker.com/
よりクリックしてどうぞ。

で、後半のノウハウ(?)は、要するに、
「本気で稼ぎたいなら、プログラムを使え!」ってことなんです。

例えば著者が作ったヒットサイトは、「半額以下.com
http://www.hangakuika.com/
ネット通販で半額以下のものだけを見つけてきて、勝手に
サイトが更新されていくというプログラムを作ったと。
これ読んで、へー!これはすごいアイデアだわと。

他にも「バーコードで価格比較.com」という携帯でバーコードの
写真を撮ってメールで送ると、その商品の最安値をお知らせします」
というサイトとか。これは自分が使いたいからって作ったそう。

ということで、著者のあびるやすみつ(阿比留康光)氏が社長をしている
AbiStudio.com株式会社(アビスタジオドットコム) http://www.abistudio.com/
を見たら、面白そうなサイトがいっぱい!

無料の占いサイト「星愛ショウのツカエル!相性占い
http://www.a-uranai.com/
ダンナとの相性は45%「相性が悪くても努力はできるんだ」って。
ハハハ‥‥そうだったのか。
私は「つきあい上手なたぬき」タイプだとか。
え~?つきあい上手?って思ったけど、説明を読んでいくと
「積極的に自己主張する事が少ないため、敵は少ないでしょう」
「少し抜けたところもありますが、それも愛嬌で、目上のひとからかわいがられます。」
なんてトコは当たっているかも。

ツイッターアイコンメーカー
http://twittericonmaker.com/
ツイッターで使用できるプロフィールアイコンを無料で作ることができるサイト。
簡単に作ってみました。
icon.png
わー!面白いー!!って、サイトで遊んでて気がついたんですが、
これらのサイト、アフィリエイトっていうか広告収入で運営されているんですよね。
だからこそ無料で私たちが使えるわけで。

民放テレビが広告収入で運営されているのは常識ですが、
アフィリエイトはネット上の広告で、
テレビの広告が販売に直結しないのに、
アフィリエイトはどれだけ成果があったかってのが即わかってしまう、
シビアな広告手段であるわけです。

なんか、アフィリエイトのノウハウっていうより、
ネットを使って新しいビジネスが出来るんじゃないかって。
今や、商品を買ったり、ホテルを探したり、引越しする時に、
ネットで安いところを探すのは普通になってきましたよね。
まだまだネットの世界には金脈が埋まっているような気がします。

いえいえ、さすがに私は、これからプログラムを勉強して‥‥みたいな
気にはなりませんが、そこのニート、一日中2チャンネルやってるくらいなら、
この本読んで、何かやってみたらどうだ――って言いたいんですが。

就職できないと不本意なフリーターをしている若い人も、
経費削減に汲々としている会社なんか見捨てて、
何かできないかとプログラムの勉強をしてみてはいかがでしょう。
今ならまだネットの世界は資本力よりアイデアのような気がします。

但し、この本にもありますが、プログラムが組めたら儲かるわけではないと。
そうだったら、プログラマーは皆アフィリエイトで生計を立てていますよね。

アフィリエイトのノウハウというと、いかにして検索の上位にランクさせるか
みたいなテクニックを想像しますが、この本は、そんな小手先の技術は全く
解説してありません。
参考サイトのURLさえ載ってません。「○○で検索」ってあるだけです。

なので、アフィリエイトの成果が上がらないが、何か売上につながるいい手は?
って人にはこの本は参考になりません。

私はこの本読んで、プログラム勉強してって気にはなりませんでしたが、
今まで楽しくネットサーフィンしているだけだったのが、
もっとネットが楽しくなるような「カイゼン」のアイデアはないかななんて、
ちょっと違った面からも見るようになりました。

この本で、書籍のアフィリエイトではamazonのリンクだけでなく、複数のショップへの
リンクを用意しろってあったので、この本で紹介されていた「樂や」の
http://www.raku-yah.com/
ブログパーツを試してみましたが‥‥2日間苦労して、なんとか楽天だけの
検索結果をプレビューできたんですが‥‥ブログに貼っても表示できずorz

楽天のリンクを手動で貼っておきます。

楽天ブックスは品揃え200万点以上!


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カズオ・イシグロ/土屋政雄=訳『わたしを離さないで』 [本]

カズオ・イシグロ/土屋政雄=訳『わたしを離さないで』読了しました。

わたしを離さないで

わたしを離さないで

  • 作者: カズオ イシグロ
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2006/04/22
  • メディア: 単行本



介護人キャシーの告白という形で語られる
ヘールシャムという施設で過ごした青春時代の回想など。
親友のルースのちょっとしたイジワルとか、
からかわれて癇癪を起こしていたトミーのこととか。
どこにでもありそうな話なんだけど、
話が進むにつれおぞましい真実が明らかになってきて‥‥
当事者のキャシーがあくまで穏やかに話すのがコワイ。

私にしてはちょっと違うジャンルの本‥‥これはSFになるんでしょうか?
カズオ・イシグロという作家の名前もそれまで知りませんでした。
この本にあった著者紹介によると、
1954年11月8日長崎生まれ。1960年、五歳のとき、海洋学者の父親の仕事の関係でイギリスに渡る。以降、日本とイギリスのふたつの文化を背景にして育つ。
1982年の長篇デビュー作『遠い山なみの光』で王立文学協会賞を受賞。
1986年発表の『浮世の画家』でウィットブレッド賞に、
1989年発表の第三長篇『日の名残り』ではイギリス文学の最高峰であるブッカー賞に輝いている。


この『わたしを離さないで』は2005年に発表された著者の第六長篇。
発売と同時に英米のベストセラーリストを賑わせ、《タイム》誌においては文学史上のオールタイムベスト100に、刊行したその年に選ばれるという驚くべき快挙を成し遂げている。
映画にもなったそうですね。私は映画はあまり興味がないので、知りませんでした。

この本は早川書房から2006年4月30日に初版発行されています。
早川書房が日本語版翻訳権独占とのこと。

この本を読もうと思ったのは、たまたまラジオで紹介していたので。
図書館の棚にあったので借りてきました。

ラジオの紹介で、タイトルから甘いラブストーリーを連想すると全く違うよと。
まぁ、ヘールシャムの真実は、ラジオで聞いた時から、薄々解ってましたが。
この本でもわりと早い段階で一人の保護官が明かします。

なので、これは真実をつきとめていくミステリーのようなハラハラ・ドキドキ感はありません。
コトの倫理や善悪を問いかける作品というわけでもないように思います。
もちろん社会の不正を暴いたり訴えたりする作品でもない。

読書にカタルシスを求める人にはこの作品は物足らないのでは?
読了感はなんかモヤモヤしたものが心に残るカンジ。心の疲労感みたいな?
‥‥でも私はそんな読了感が結構好きなんですよね。

なぜキャシーたちは、猶予を願ったりするのに、それ以上の‥拒否とか‥ことを
訴えようとか、試みようとかしないのだろうか、残酷な運命をこんなに素直に受け止めてしまって‥‥
でも考えたら、私たち普通の人間も運命からそんなに自由なわけではないんですよね。
死病にとりつかれる人もいるし、戦争に行かなければいけない人は《提供者》とどう違うのかとか。

ラストの文章は印象的です。
顔には涙が流れていましたが、わたしは自制し、泣きじゃくりはしませんでした。しばらく待って車に戻り、エンジンをかけて、行くべきところへ向かって出発しました。

‥‥ヒロインのキャシーが涙を流すのはこのラストのみだったと思います。
語り口が淡々としているのがこのグロテスクな世界を描くのにいいんでしょうね。
もちろん日本語訳がいいんでしょう。

訳者の土屋政雄さんはカズオ・イシグロの『日の名残り』や、
ジョン・スタインベック『エデンの東』など英米文学の多数の翻訳をされているそう。

私は今まで翻訳小説ってあまり好きじゃなかったんですよ。やっぱ文章がこなれてないっていうか。
でもこの文章いいですね。

寄宿学校とも言えるヘールシャムは、ハリー・ポッターの魔法学校のような
イメージで読みました。

文庫にもなっているんですね。

わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)

わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)

  • 作者: カズオ・イシグロ
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2008/08/22
  • メディア: 文庫



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瀬戸内晴美『祇園女御』 [本]

今年のNHK大河ドラマは「平清盛」
――毎年NHKの看板番組(?)として、気を入れて作られており、
タイアップでの観光や展覧会などのイベントも多いですね。
大河ドラマ「平清盛」HP: http://www9.nhk.or.jp/kiyomori/
評判はどうなんでしょう?私は見たり見なかったりですが、
(もともと私はテレビもドラマもあまり見ないので)
初回は見ており、伊東四朗が演じる白河法皇のふてぶてしさと、
松田聖子が演じる祇園女御は印象に残りました。

で、確か昔、瀬戸内晴美の『祇園女御』って作品読んだハズだけど‥‥って。
読み返してみました。歴史背景など忘れているというか、
読んでも頭に入ってないことも多くて、あらためて興味深く読みました。

祇園女御(上) (講談社文庫 せ 1-4)

祇園女御(上) (講談社文庫 せ 1-4)

  • 作者: 瀬戸内 晴美
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 1975/09/25
  • メディア: 文庫



祇園女御 下 (講談社文庫 せ 1-5)

祇園女御 下 (講談社文庫 せ 1-5)

  • 作者: 瀬戸内 晴美
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 1975/10/28
  • メディア: 文庫


この本、「祇園女御」ってタイトルなんですが、
祇園女御が登場するのは下巻のそれも後半。
「たまき」という名前の少女時代のこともそんなに多くは語られません。

この作品のヒロインは
承香殿(じょうきょうでん)の女御・藤原道子であり、
数奇な運命を生きる女「あかね」でしょう。

源氏物語の六条御息所のような道子のことは気を入れて描かれており、
この小説を初めて読んだ頃――結婚前でした――もし女の子が生まれたら
「道子」って古風な名前もいいかなって思ったくらい。

この作品は、昭和42年(1967年)4月から翌年5月まで、
新聞三社連合に連載されたものだそう。

冒頭は『とはずがたり』の解説から始まります。
著者は昭和46年(1971年)には『とはずがたり』を作品化した『中世炎上』を発表。

中世炎上 (新潮文庫)

中世炎上 (新潮文庫)

  • 作者: 瀬戸内 晴美
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1989
  • メディア: 文庫



また昭和48年(1973年)には現代語訳もしています。

現代語訳 とわずがたり (新潮文庫)

現代語訳 とわずがたり (新潮文庫)

  • 作者: 後深草院二条
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1988/03
  • メディア: 文庫



源氏物語の光源氏と藤壺の密通も物語にしてもすごいなぁって思うんですが、
『とはずがたり』は後深草上皇の寵愛を受けた二条とよばれる女性の日記で、
これが現実にあったことを書いているわけで‥‥す、すごい。

宮廷に上がった貴族の女たちの貞操が、いかに頼りなく、守られ難いものであったかは、源氏物語にも書かれている。

平清盛が、白河法皇の落胤だという説は、今では歴史学者の認めているところだし、鳥羽天皇の皇子と皇統系図では示されている崇徳天皇さえ、まことは白河法皇の皇子だったと歴史家は証明しているのである。

吉川英治の『新・平家物語』では、祇園女御は泰子という名を与えられ、稀代の悪女に描かれている。
そして、祇園女御を清盛の母としているそう(私は未読)ですが、瀬戸内晴美の『祇園女御』では‥‥

その混沌ぶり曖昧さが、物語の作者にとっては、「空想」という便利なひとことで、どこまでも想像や妄想の翅を押しのばせる所以でもある。」と、資料を調べた上で、生き生きとした物語にしています。

この『祇園女御』は、『とはずがたり』より170年ほど前の時代が舞台。
『源氏物語』が書かれた頃、栄華を誇った藤原道長の孫・能長(よしなが)の娘が
承香殿の女御となる藤原道子です。

そんな貴い身分に生まれ、生まれついての美貌と才能に恵まれた道子。
だが、幸せな人生ではなかった。

道子15歳の時に、4歳の東宮の妃となるように言い聞かされ、
あたら美しい時を秘仏のように守り育てられる。

道子の美しさの評判に、求婚する貴公子も多かったのだが、
父親の能長がちらともそばへ寄せ付けない。

能長の従弟にあたる藤原祐家は、光源氏のようなプレイボーイぶりで、
なんとか道子をモノにしようと、侍女のあかねを籠絡して道子にせまる。
あわや‥‥って場面もあって、そのあたりのきわどい描写もさすが瀬戸内さんです。

侍女のあかねは祐家を手引きしたことでひまを出され、
祐家の世話になるが、祐家が見つけてきた娘の世話を頼まれ、
その娘が祐家の寵愛を受けて娘を産んだのを嫉妬して、
娘を盗んで竹藪に捨てる――この赤ん坊が祇園女御という設定なのだが――
あかねはその後夜盗に襲われ陵辱され、傀儡子(くぐつ)の首領の女となり、
伊勢平氏正盛(清盛の祖父)に献じられ、
正盛はあかねを白河院に献じ、
白河院は帝位に備わると人望のある三の宮に密偵としてあかねを下賜する‥‥と、
物語ならではの数奇な運命を生きます。
このあたり、傀儡子や正盛のバイタリティーが魅力です。

道子は父親の思惑通り、28歳の時に17歳の東宮(後の白河院)妃として入内する。
年の差に気後れする道子に対して、年よりずっと大人びた東宮は、
道子を寵愛する。父親の能長は有頂天になるが、道子はなかなか懐妊しない。

やがて東宮に新しい妃として若い賢子(けんし)が入内してくると、
東宮の寵愛は賢子に移っていく。

後三条帝が譲位されて東宮は白河帝となる。
後三条帝は新東宮に自分の二の宮を立て、その後の東宮に三の宮を指名して亡くなる。

白河帝と賢子の仲は睦まじく、第一皇子を赤裳瘡(もがさ)で亡くした時は
二人して悲嘆するが、第二皇子に恵まれる。
その第二皇子が5つの時、賢子は亡くなってしまう。
白河帝の嘆きはひととおりでなく、政務さえ滞らせてしまうほどだったが、

裳瘡が流行して、東宮(後三条帝の二の宮・白河帝の異母弟)が亡くなる。
後三条帝の遺詔ではその後の東宮は三の宮とのことだったが、
白河帝はなかなか次の東宮をたてられない。
自分の第二皇子が8つの時、白河帝は第二皇子を東宮に立て、その日のうちに
譲位してしまう。堀河帝は幼いので白河上皇が院政を執ることになる。
当然、三の宮の周辺では不満が充ちる。

歴史の授業で、院政は藤原摂関家の力を抑えるためとか習ったけど、
白河上皇の院政は、自分の子を天皇につけるためだったように思える。
白河上皇は「治天の君」と呼ばれるようになり、天下の政は院中心に動いていくようになる。

ここまでは、白河帝は源氏物語の光源氏のように描かれているが、
――賢子が紫の上で、道子が六条御息所のよう――
ここから急に政治のこと、あかねと平正盛のストーリーもからんで、
「治天の君」として君臨した、ふてぶてしいような白河上皇が描かれる。

まだ幼い堀河帝なので、三の宮周辺では、こんどこそ東宮に三の宮をと期待するが、
白河院はまだ13歳の天皇に32歳の叔母にあたる篤子内親王を立后させたり
――篤子内親王が斎宮に選ばれた娘について野々宮にいる道子のもとを訪れて嘆く場面が哀れ――
それで子どもが生まれないと、若い女御・茨子を入れ、女御は皇子を産んで亡くなる。
皇子は生まれて1年にもならないうちに東宮に立てられ、白河法皇の下で育てられる。
堀河帝はもともと病弱だったが、女御に先立たれ、政治も思うようにならずに、
29歳で亡くなる。自分の息子の死もそこそこに5歳の孫を鳥羽帝として即位させる白河法皇。

晩年の白河法皇の好色ぶり、さすが瀬戸内晴美さんの筆は生き生きとして、
謎の寵姫・祇園女御を、白河法皇の寵を拒む女として魅力的に描いています。

平忠盛も出てきますが、中井貴一の平忠盛がカッコ良かったって人が読むと幻滅かも。
清盛は祇園女御の昔の傀儡子仲間の夫婦に生まれた娘・ちどりを妹として邸に引き取っていたのに
白河法皇が手をつけて、胤を宿したちどりを平忠盛に下賜したとしています。
待賢門院璋子は祇園女御の猶子と白河法皇が連れてきたと。幼い頃からの放埓な女ぶり、
男を惑わせる美貌の女として描かれています。

『祇園女御』は、白河法皇の死で終わっています。

動乱の平清盛の時代の少し前の歴史に興味を持たれた方、かなりの長編作ですが、
読んでみられても面白いですよ。

瀬戸内晴美の歴史小説
足利義政と愛妾のお今さまと正室・日野富子の葛藤などを千草という女の目から描いています。

幻花(上) (集英社文庫)

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  • 作者: 瀬戸内 寂聴
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 1979/06/20
  • メディア: 文庫



幻花(下) (集英社文庫)

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  • 作者: 瀬戸内 寂聴
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「古本 徒然舎」で買った中原淳一の本 [本]

今年は梅の開花が遅れましたね。
岐阜の梅林公園の梅まつりが3月3日(土)、4日(日)だったのですが、
まだ全然咲いていないって聞きました。
春分の日も過ぎた21日(水)、さすがに見頃になったのではないかと出かけました。

今回、参考にしたのが、無料で宅配されてくる
「ぷらざ」という情報誌の2月号のこのページ。
2012.3.21-081.jpg
へー、梅林公園の近くにこんな素敵なカフェや古本屋があるんだ、
梅を見るついでに行ってみようかって。

駐車場に車を停めて、歩き出したところで、
看板が目に付いた「ル・モンド」というレトロな喫茶店でくつろぎ、
そこを出て少し歩いた「殿町2」の信号で
2012.3.21-008.jpg
「この地図でいくと古本屋さんはこのあたりだけど‥‥?」
注意深く見ると‥‥ありました!
2012.3.21-078.jpg
情報誌で見てなかったら気がつかずに通り過ぎちゃうような店です。

古色蒼然―古く汚い―とした本がうず高く積まれているような
街の古本屋さんって、もう今では珍しいのでは?
古本と言ってもキレイな本が、キレイで広い店舗に並んでいるような店
――新古書店って言うらしいですね、ブックオフのような店は――
そんな古本屋が多くなりましたからね。

ここは、そのどちらでもなく、町の小さな図書室とか、
本好きの友人の家に遊びに行ったみたいな雰囲気の店。
靴を脱いでカーペット敷きのフロアに上がり(入口の牛の置物がカワイイ)
本棚の本を見ていると、なんか寛いじゃいます。

古本だけでなく、小さな出版社から出している新刊本も扱うようです。
古い写真なども売られていました。
徒然舎のウェブサイトはこちら:http://tsurezuresha.net/

いいなって本はいくつかありましたが、今回はこちらを買いました。
「別冊太陽 美しく生きる 中原淳一 その美学と仕事」
1999年4月25日初版第1刷、この本は2001年10月20日初版第7刷
定価2,300円+税と印刷されていました。
1999年に開催された中原淳一展の展示カタログを兼ねた本とのこと。
1,500円でした。(入っていた徒然舎のしおりがセンスいいです)
2012.3.21-079.jpg

中原淳一の多彩な仕事‥‥挿絵からファッションデザイン、
「ひまわり」「それいゆ」などの雑誌のエディター、
グラフィックデザイナー、人形作家、詩人、エッセイスト、コピーライター、
プロデューサー‥‥が紹介されています。
様々な方が中原淳一について語っていますが、その顔ぶれがすごい
久世光彦、金子國義、田辺聖子、森英恵、コシノジュンコ、高田賢三、
やなせたかし、辻村ジュザブロー、ホリ・ヒロシ、永六輔、
雪村いづみ、中村メイコ、ペギー葉山、三輪明宏‥‥

特に水野英子が中原淳一の影絵物語のシルエットに魅せられたと書いていたのが、
載っているモノクロの絵を見るとすごくよくわかります。
私、ここに載っているような中原淳一の絵ってあまり知らなかったんですが、
すごくロマンチックでセンスいいですね!
水野英子の華麗な絵が中原淳一の影響の下にあったのかは明らかです。
水野英子だけでなく、少女マンガの原点ですね。
あの星がキラキラした大きな瞳もそうですし。


美しく生きる―中原淳一その美学と仕事 (別冊太陽)

美しく生きる―中原淳一その美学と仕事 (別冊太陽)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 平凡社
  • 発売日: 1999/04
  • メディア: ムック



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